00.不意に見た景色


 ひらひら、ひらひら 舞えよ舞え
 その美しい色彩を、人々の目に焼きつけよ

 輝かしい光を浴びず
 天子に愛された一族と対になる者
 滅する事しか出来ぬ者が存在自体を厭う者

 闇夜で舞うは、二対の美姫


 歴史の裏に刻まれた
 浄の力を持つ者
 隠しかくまり、日を浴びず、生き続けること幾星霜
 千変万化する箱庭の中
 それでもそれ以上の世界を見つめる事は出来ない

 
 座敷に蝶が迷い込んだ
 美姫が手を伸ばしても、それはひらひら逃げていく
 美しく舞えよ舞え
 美姫は灯篭に照らされ揺れ動く、二つの翅
 燐粉の焦げる匂いさえ物珍しく、二人はそれを凝視する


 そして二人は目が覚める
 硬くきつく結ばれた手
 となりから感じる息遣いに安堵して、目が覚める
 後に人の温もりを感じる喜びが、二人が生きる喜び
 それが二人の同意義
 同じ夢見て目が覚める 蝶はどこに消えたのか
 所詮は夢幻の出来事と、美姫は小さく小さく笑った



 灯篭の側には片平だけ残翅
 そして僅かに香る焦げた匂い

 美姫は気付いてまた小さく笑った
 『幸せ』のまま確かに笑った




 周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるか
 理解するのはまだ先の話


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