つめたい白い雪の中で。お腹もへったし、もうボクは死んじゃうんだなって思っていたら、あたたかい手がボクを包んだ。


 ご主人様とボク 01


 人間がいたことには気づいてた。だけでほえるだけの元気もなかった。
 さむくって、お腹がへって、さみしくって。誰にも気づかれずにこのまま死んじゃおうと思ってたら、足音が近づいてきた。
 うっすら目をあけると、まゆをよせてる。だれだ、こいつ。もう一人後ろからおっきいのものきた。こいつはボクをにらんでいた。にらみたければにらめばいいよ。どうせもう死んじゃうんだから。
 でも小さいほうはなんかさけんでる。おっきいがいやなかおをしてるけど、小さいほうは一生懸命なにか言ってる。
 ああでもボクにはかんけいない。小さいほうに抱いてもらって、そのぬくもりがとってもあったかくて。死ぬまえにもう一度あったかいって思えることができてよかった。
 そう思いながら、ボクは目をとじた。さよなら、世界。

 次にボクが目を開けたとき、どこだろうと思った。
 死んだらどこに行くかなんてしらなかったけど、死んだ狼は随分いい場所へいくんだな、なんて思った。
 あったかくて、ふかふかしてて、いいにおいのする場所。ボクは鼻を動かして、少しだけあたりを見回す。
 ……あれ、このにおいって……。

「あ、気が付いた!」

 さっきの小さいほうの子がボクを見つめてる。
「良かった! 目が覚めたのね! もう大丈夫だから」
 そういってボクの頭を撫でる子はうれしそうにわらってた。今、ボクのおかれてるじょうきょうがいまいちわからない。ボク、まだ死んでないの? ここはどこ?
「お腹減ってるでしょう? 今、ミルクを用意するから待っててね!!」
 みるく?
 それなぁに? とうぜん、ボクの声があの子に届くわけもなく、あの子は立ち上がってどこかへいってしまった。
 どうやらボクはあの子に助けられたらしい。何でだろう?
 あの子はすぐにもどってきた。
「はい、ミルク。飲めるかな?」
 白い器の中に、何か入ってる。少し甘いにおいがする。なにかやなものでも入ってるのかな? はんだんするために少しだけにおいをかぐ。
 ……お腹はすごくへってる。もういいや、これを食べて死んじゃっても。そうおもって、舌でちょっとだけなめてみた。 おいしい。
 ひとくち、ふたくちとボクは飲む。その様子を、あの子はうれしそうにみながら、ボクの背中を撫でてる。それもちょっと気持ちい。
「おいしい?」
 おいしくなきゃのまないよ。
「よかった」
 何も言ってないのに、この子はうれしそうにわらってる。ボクもなんだかうれしくなってきた。
「もう大丈夫よ、私があなたと一緒にいるから」
 ……え? この子は今何て言ったの? ボクと、いっしょにいるっていったの?
 お母さんとはぐれて、もうだめだって思ってたのに、思いもよらないところにあらわれたこの子は、とんでもないことをいってるようにしか思えなかった。
 ホント? ほんき? と飲むのをやめてあの子をじっと見る。そうするとこの子はまた笑った。
「私はね、カノンっていうの。よろしくね! リュミエール」
 とりあえず、この子、『かのん』の中で、ボクはいっしょに生きることはけっていじこうらしい。まあべつにいいかなっておもってみたりするんだけどさ。でもさ、『りゅみえーる』? だれそれ。ボクのこと?

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